「なぜ海外のリーダーはインプロを学ぶのか?」では、インプロによってリーダーシップを高められることをお伝えしました。その中でも少し触れたように、インプロはチームの心理的安全性を高めることにも役立ちます。
Googleは心理的安全性を、以下のように定義しています。
チームの誰もが、失敗を認めたり、質問をしたり、新しいアイディアを提案することで誰かを困惑させたり、咎めたりすることはないと自信を持てること。
re:Work
このような心理的安全な場を作ることは、現代の組織にとって欠かせない課題となっています。では、インプロはどのように心理的安全性な場づくりに役立つのでしょうか?
心理的安全性研究の第一人者であるエイミー・エドモンドソン氏は、即興性と心理的安全性の関係について次のように述べています。
―――インプロのスキルをトレーニングすることで、チームの心理的安全性を高めることは可能だと思いますか?
絶対にうまくいくでしょう。それはいわゆる鶏と卵です。心理的安全性を高めて即興性を高めるのか、それとも即興性を高めて心理的安全性を高めるのか。答えはどちらもイエスだと思います。どこから始めるかは問題ではありません。
Psychological Safety. Improvisation.Science: Interview with Amy Edmondson
インプロと心理的安全性は、切っても切れない関係にあります。どちらか一方が他方に影響するのではなく、互いに影響し合う関係にあるのです。
エドモンドソン氏は、同インタビューでさらに続けて以下のように述べています。
でも、私の好みは先に行動を起こすことです。インプロを経験し、恥ずかしさで死ぬことはないことを人々に分かってもらう。むしろそれを楽しんでもらえるかもしれない。そこから学び、互いを好きになり、人生は続く。これが心理的安全性を生み出すのです。
このように、インプロでは具体的な経験を通して、心理的安全性を生み出していきます。では、それはどのような経験でしょうか?
1. 共にチャレンジし、失敗も歓迎する
インプロにおける基本的な考え方に「失敗はギフト(mistakes are gifts)」というものがあります。失敗は恥ずべきものではなく、歓迎して良い、という考え方です。
共に失敗し、それを認めることは、チームの心理的安全性を高めるために重要な要素の一つです。Netflix事業開発責任者のBill Holmes氏は、インプロの効果について、のように述べています。
(スタッフたちは)共に失敗することで信頼を築いている
Google and Netflix know the power of improv in the workplace. This is how to make it work for you
インプロでは「失敗しないこと」ではなく、「安全に失敗すること」を大事にしています。そのために、難しい課題にチャレンジし、失敗をオープンにする(そしてそれを楽しみあう)ワークがいくつもあります。チームメンバーでそれを共に体験することで、失敗を受け入れるハードルが下がっていきます。
とはいえ、失敗することが賞賛されることに不安を感じる人も多いでしょう。それについては次の記事が参考になります。
誤解しないでほしい、これは失敗に報いるということではない。これは、弱さ、透明性、そして失敗を許し認めた勇気に報いることである。
Building psychological safety through theatre improvisation
失敗を認めないチームで起こることは、チャレンジの不在と、失敗の隠蔽です。それは短期的には失敗を無くすものになりますが、中長期的には大きな失敗となります。
インプロで大事にしているのは「チャレンジすること」「失敗をすぐにオープンにすること」です。そのことによって、チームは素早く学習していくことができます。
インプロは、障害を協働により生産的に対処するスキルを教えてくれる。例えば、チームが前進できるように失敗をチャンスに変えるクリエイティブな方法を学ぶことができる。
このようなインプロのスキルが、職場で培われ、奨励される時、どのように積極的にリスクを取り、生産的に失敗に対応するかの力強い共有ができる。
Psychological Safety in the Workplace: Why Improv Can Help
インプロでは、積極的にリスクを取る練習を行うと同時に、失敗を新たな可能性を生むものと捉える力を培うことができるのです。
2. 「イエス・アンド」を通して、アイディアを育てる
リスクや失敗を恐れない環境づくりのために重要となるのがインプロの基本でもある「イエス・アンド」の考え方です。
イエス・アンドは、相手のアイディアを受け止めて(Yes)、それに積み重ねていく(and)コミュニケーションの方法です。
メンバー全員が快適に意見交換できるグループを想像してほしい。どのアイディアも良いアイディアである。いくつかは最初のディスカッションをクリアできないかもしれないが、全員が自分の存在はチームにとって重要な価値があると感じることができる。そして協力的なチームによって、あまり良くないアイディアの中から素晴らしいアイディアが現れ、育まれるのである。
Psychological Safety: Improv Team Building in Sync with Google Finding
「目的意識を持ち、会社に価値をもたらしていると感じたい」(同記事) という人々の願いを叶えるためには、イエス・アンドのマインドによる心理的安全な場は欠かせません。会社のための努力が報われ、そして自身が会社にとって必要な存在であると感じられる時、人々はより良いアイディアを考える努力をすることができます。
ワークショップでは、このイエス・アンドを実際に体験できるワークを行います。その状態と普段の状態を比べることで、普段のコミュニケーションをふりかえることができます。また、イエス・アンドのワークを繰り返すことで、普段のコミュニケーションの中でも自然とイエス・アンドしやすいモードになっていきます。
「イエス・アンド」を深めていくうちに、私たちはインプロは選択の連続であることを学ぶ。全てのシーンもストーリーも、一つのアイディアから生まれるのである。私たちは、最初のアイディアに「イエス」と言い、そしてチームとして、その上に新たなアイディアを構築していく。それぞれの選択が、前の選択やアイディアをサポートする。
複雑な時代において、正解は一つではありません。「イエス・アンド」によって選択肢が増えることで、新たな可能性を生み出すことができるのです。
インプロでは様々なワークを通して、心理的安全性の高いチームとはどのようなチームであるかを疑似体験すると同時に、アイディアを共有し育む方法を学ぶことができます。ご興味ある方はフィアレスまでお気軽にご相談ください。