仕事で「なんとなく気分が乗らない」状態から抜け出す方法とは

仕事をしていると、どうしても「なんとなく気分が乗らない」ということがありますよね。気分が乗らない状態でもなんとかして仕事を進められる場合もありますが、できればやる気に溢れて楽しく目の前のタスクに取り組みたいところです。
本記事では、「なんとなく気分が乗らない」と感じている時に、やる気を取り戻す方法について提案します。友達や上司に相談するという形ではなく、自分の考え方や捉え方を少し変えるだけでできることをまとめています。

自分が気分が乗っていないことに気づく

「なんとなく気分が乗らない」と感じることは誰にでもあります。まず、その気持ちに気づくことが大切です。忙しい日常の中で、無理にやる気を出そうとすると、かえってストレスが溜まり、効率が下がることもあります。そのため、まずは自分の気持ちに正直になり、「今日はなんとなく気分が乗らないな」と認めることが、次のステップへ進むための第一歩です。

反対に、「気分が乗らない」ことを認めず、「私は頑張っている」「これを私は楽しくやらなくてはいけないんだ」と自分を偽り続けていると、無理をして心や体を壊してしまったり、視野が狭くなり新しいアイデアや重要なミスに気付くことができなくなってしまったりします。

気分が乗らないことを認めようと認めずにいようと、あなたの気分が乗っていないという事実は変わりません。気分が乗っていないという事実から次のステップに進んでいきましょう。

身体の不調か心の不調か判断し、身体の不調なら休む

気分が乗らない原因が身体の不調にあるかもしれないと考えてみてください。疲れや睡眠不足、栄養バランスの偏りなど、身体に起因するものならば対応は比較的簡単です。

簡単なストレッチや軽い運動を取り入れたり、食事や睡眠を見直すことで、気分が改善されることがあります。また、定期的に休息を取り、リフレッシュすることも大切です。

目の前のタスクの意義がわからなくなっている

大聖堂を作る3人の職人の話を聞いたことがありますか?

ある日、旅人が大きな工事現場に出くわしました。そこでは、3人の職人が石を積んでいました。彼は彼らに同じ質問をしました。「何をしているのですか?」

最初の職人は、ぶっきらぼうに答えました。「見てわかるだろう?石を積んでいるんだよ。重くて大変な仕事さ。」次に、2人目の職人に同じ質問をすると、彼は少し落ち着いた様子で答えました。「石を積んで、壁を作っています。家族を養うために働いているんです。」最後に、3人目の職人に尋ねたところ、彼は誇りに満ちた笑顔でこう答えました。「私は大聖堂を作っています。何百年も人々が祈り、集い、そして心の安らぎを得る場所を作っているのです。」

この3人の職人がやっている仕事は同じです。しかし、彼らの感じ方やモチベーションには大きな違いがあります。最初の職人は、仕事をただの労働と捉え、日々の苦労に囚われています。2人目の職人は、仕事を生活のための手段として捉えていますが、そこに喜びややりがいを見出しているわけではありません。3人目の職人は、同じ仕事を「大聖堂を作る」という壮大な目標として捉え、自分の仕事に大きな意味と価値を感じています。

ポイントは、人間の意識は良くも悪くも変化することです。
最初は3人目の職人のように目的や意図、自分の中の価値を明確に持って仕事をしていた人も、何日も何日も石を積んでいるうちに、ただ石を積む仕事だと認識が変わっていってしまうことがあるのです。

どうしてその仕事を始めたのか思い出し、目の前のタスクとの共通点を探す

今の会社に入った理由、今の職業を選んだ理由など、最初の動機を思い出してみましょう。今目の前にあるタスクを超えて、できるだけ大きく根源的な仕事の目的や動機であることが大切です。ワクワクするような、心の底からモチベーションが湧き上がってくるような感覚が生まれるとベストです。

当初の目的や動機が思い出されたら、今目の前にあるタスクとの共通点を探してみましょう。

目の前のタスクには、必ず当初の目的と同じ方向を向いているはずです。どんなに小さなことでも、最初の目的や目標と結びつけることで、今の仕事の意義が見えてきます。この共通点を見つけることで、日々の仕事が自分にとってどれほど価値があるのか、再確認することができるでしょう。

タスクそのものには、どんな意味があるのか、仕事の中のどんな位置付けのものなのかということは、気分が乗らないその時も理解している可能性が高いです。

「例えばブログを書く」というタスクだった場合、会社の広報の意味付けでやっていることやプロジェクトの中間報告をすることでファンが共感できるポイントを増やすなどです。これらは仕事を作業としてみなしてしまうものです。そんな時は、”大聖堂で心を安らげる人々の顔”のような、本来の目的の要素が心に火をつけてくれるでしょう。

参考になる考え方:ジョブクラフティング
ジョブクラフティング(Job Crafting)とは、従業員が自らの仕事に対して積極的に変更を加えることで、仕事に対する満足感や意義を高める手法です。これは、従業員が自分の仕事を単に与えられたタスクの集まりとしてではなく、自分のスキルや価値観に合わせて再構築するアプローチで、仕事へのエンゲージメントやパフォーマンスの向上を目指します。

人の感性で仕事をしてしまっている

自分ではない誰かの感性を元に仕事をしていないか確認してみましょう。

例えば、あなたが重要なプレゼン資料を作成しているとします。上司がこれまでに作成した資料のスタイルや内容を思い浮かべ、「上司ならこういうデータを使うだろう」「こういうデザインにするだろう」と考えながら作業を進めてしまう状況です。

これでは、上司のやり方に忠実であろうとするあまり、あなた自身のアイデアや新しいアプローチを提案する余地がなくなります。結果としても、上司が作る資料の通りになることはあり得ず、劣化版になるので、下手をすると期待以下の資料に評価が下がったり、自分が落ち込んでしまうことになりかねません。

他人のやり方に合わせることばかり考えると、自分の個性や独自の視点が失われ、仕事に対する楽しみや意欲が薄れてしまいます。このような状況では、やらされ感が強まり、気分がますます乗らなくなってしまうでしょう。まずは、自分が誰かの期待に無意識に応えようとしていないか、冷静に見直してみましょう。

次に、自分だったらどう進めるかを考え、それに従って作業を進めることが重要です。資料の配置や言い回しなど、たとえ小さなことでも、自分の考えやアプローチを取り入れることで、やらされ感が薄れ、仕事に対する興味や熱意が再び湧いてくることがあります。自分の意見を反映させることで、仕事が「やらされるもの」から「自分のプロジェクト」へと変わり、気分も自然と前向きになるでしょう。

参考になる考え方:自己決定権
自己決定権とは、個人が自分の行動や選択を自主的に決定できる感覚を指します。これは、自分が行うことについてコントロール感を持ち、自らの価値観や目標に沿った意思決定ができる状態です。仕事や学習、日常生活において、自己決定権が高いと感じると、その活動に対する積極性や満足度が高まります。

仕事に大きなプレッシャーを感じている

どうしても身体が動かない時、その仕事に自分がプレッシャーを感じている可能性があります。仕事の責任感や期待される成果、期限など、さまざまな要因によって引き起こされますが、その結果、不安感や焦燥感、集中力の低下、自己評価の低下などが生じることがあります。また、過度に考えすぎてしまい、決断が遅れることもあります。

「怖い」「できない」を認める・感じ切る

怖いことやできないことを認めることは、事実に直面することや自分の限界や欠点を受け入れるということなので、勇気のいることです。しかし、認める勇気を持つことなく進んでいくと逆に弱さが露呈していきます。人の悪口を言いたくなったり、環境に文句をつけたくなったり。なんでもないことにして進むことは、無理をして余分な力を入れた状態で行動することになるので、本来の力を発揮することもできません。

ではどうするか。
それは、怖さ・プレッシャーをしっかり感じきることです。身体がゾワゾワしたり震えたり、冷や汗をかくなど感覚の変化を感じるでしょう。この状態になったところからがスタートです。「失敗するかもしれなくて怖い」「大きなプレッシャーに身震いする」と感じ切ることができると、自然と、「それでもやりたい」と思えたり、「今自分にできることは目の前のタスクを一つ一つこなしていくことである」と心から理解することにつながります。または、「これは自分にはできないことだ」と認識し、他の人に依頼したり上司に調整をお願いするという行動に移ることもできます。

ラーニングゾーンに移行する勇気のある自分になる

人の成長には「コンフォートゾーン」と「ラーニングゾーン」があります。(ミシガン大学のビジネススクール教授、ノエル・M・ティシー氏が提唱)

コンフォートゾーンは、安定して安心感が得られる領域で、既に身につけたスキルや習慣を活用する場です。しかし、成長や学びが停滞しがちです。一方、ラーニングゾーンは新たな挑戦が求められる領域で、適度な不安やストレスを感じることが多いですが、その分、スキルや知識を広げる機会が豊富です。プレッシャーを感じているのは、まさにラーニングゾーンに自分がいるということでしょう。

コンフォートゾーンから抜け出して、ラーニングゾーンに移行する。そこがまたコンフォートゾーンになるというサイクルをできるだけたくさん回すことができると、自分の成長は早くなります。でも、ラーニングゾーンは不安を感じるため、移行にはとても勇気がいることが多いです。

しかし、この勇気は後天的に身につけることができます。何度も何度も不安を感じる状況に身を置くのです。「勇気を持って不安を感じることに挑戦する」という状態をコンフォートゾーンにしてしまうのです。結果的に、ラーニングゾーンで感じる不安が自分に与える影響を小さくしていくことができるでしょう。

日常的に不安を感じる状況に身を置く難しいかもしれません。しかし、ワークショップや研修、コーチングといった日常や日々の業務とは少し距離をとったところであれば、比較的簡単に行うことができます。

弊社が実施しているインプロ研修では、「先がどうなるかわからない場所」を楽しむ態度を作っていきます。繰り返し不安でドキドキするような状況を経験しながらも、その状況を楽しんだり笑いあう環境が、あなたを勇気あふれる自分に導いてくれるでしょう。