株式会社フィアレスでは、東京都福祉人材トレーニングセンター様にて研修を実施いたしました。どうして弊社に研修を依頼していただいたのか、どんなことを目標に、どんなことを実施したのか、などをこちらの記事でご紹介いたします。
※記事内に登場する写真に写っている方は、ファシリテーターまたはアシスタントです。児童相談所職員の皆様のお顔は伏せております。
研修概要
対象:児童相談所にて働く職員の皆様
時間:3時間
ファシリテーター:1名
アシスタント:5名
研修の目的
今回の研修では、コミュニケーションについてトレーニングしていくことに加え、日々人と全力で向き合う児童福祉司さんや児童心理司さんが、大きい声を出して笑ったり、感情を抑えずに出すことで、リフレッシュしてもらうことを目的に実施しました。
前回の研修報告はこちら
そもそもインプロってなに?という方はこちら
研修で取り上げたポイント
今回の研修でも、さまざまなワークを行いました。その中でもポイントになった点とワークを2つ紹介します。
①わからなかったら「真っ白」
例えば、シュートを打ったら絶対に入れなくてはならない。
バッターボックスに入ったら絶対にホームランを打たなくてはいけない。
そんなことを思うと、身体が固まって逆にパフォーマンスが落ちてしまうことは想像しやすいですよね。
即興演劇においても同じで、毎回いいアイデアを出そう、面白いことを言おうとすると、固まって何も出てこなくなってしまいます。いかにリラックスした状態でいるのか、できなくてもいいというマインドを持って舞台に立てる身体を作れるかが大事になってきます。
しかし、ことコミュニケーションにおいてはそう思えないことが多いのではないでしょうか。
・何か聞かれたらすぐにちゃんと返さなくてはいけない。
・間違ったことを言ってはいけない。
・わからない、と言ってはいけない。
そんなことを思ってしまう瞬間はありませんか?
そうやって緊張していることで、結果何も答えられなくなってしまったり、思ってもいないことを口走ってしまい誤解を与えてしまったりなんて状態が生まれます。
今回の研修を通して
・アイデアが思いついていません。
・何を言ったらいいかわかりません。
・次どうしたらいいかわからず困ってます。
という時は「真っ白」といって表現することを大切にしてきました。
しかし、「真っ白」と言っていいとなっても、実際は「申し訳ない」と思ってしまったり、真っ白という状況であることに気づけないなど、すぐにできるものではありません。できない前提で、研修の中でたくさん練習していきました。
参加者の皆様の感想・ふりかえり
真っ白っていうのがあることで安心が担保されていた。真っ白がなかったら不安だったろうなと思うけど、真っ白があったから楽しめたかなと思いました。
真っ白と言えることで気楽だったんですけど、真っ白を使わずに結構続いた時間があり、だんだんと「ああ、もう言っちゃだめだ〜」と感じて不安が強くなりました。
講師)自分がどうだったかというところに、良いも悪いもない。「なんかもうしちゃだめかも」って思うことで不安が生まれたという自分の思考回路に気づくだけでいいです。
大人になってから、何か聞かれたらすぐ答える、合わせる、ペースを乱しちゃいけないと思って生きてきた。でも「真っ白」といえたことで、「わかりません」と言えることって不安がなくなるし気持ち軽くなるなと思った。
何を伝えたらいいかわからない時が仕事でたくさんあって、その時何も発信できなくなる自分がすごく嫌になることがある。でも、「真っ白になっちゃったよ」っていうことを伝えればいいんだなっていうのが残りました。
自分が相手をどう見ているかで、自分が変わる「レッテル」
演劇やコミュニケーションの世界ではよく言われる「レッテル」「バイアス」。自分がどう見ているかで相手の見え方や印象が変わってきてしまうことはよく知られていることかと思います。
今回はさらに行動の面からも「レッテル」を感じてもらうためのワークを行いました。
<ワークのやり方>
2人で行う。
A:家に迎え入れる
B:家に訪問する。
AとBは初めて出会う設定。
まずはなんの情報もない状態でAの家にBが訪問する。続いて、Bは連続殺人犯であり、Aはその指名手配の写真をみたことがあるという設定をAにだけ伝える。Bは変わらずAの家に訪問する。
家に訪れた初めましての人が、前情報なく出会う人と、連続殺人犯で指名手配されている人だったら、自分の行動がどう変わるのかを体験するワークです。
参加者の皆様の感想・ふりかえり
連続殺人犯がきた時、自然と距離をとってたりする自分がいました。仕事で面接をしているときとか、相手が動くから自分は動いていると思ってたけど、事前情報でこういう人だと自分がレッテルを貼っているんだと気づきました。
自分達もそうだし、仕事でいえば周りの人にも、こういう人だなとレッテルを貼って、どこかで安心して、この人はこうだからこうすればいいとかで使ってるところもあって。それはあくまで主観で、本当はその人にはいろいろな面がある。自分が持っているレッテル含めて剥がしたいなと思いました。
レッテルの部分が印象に残っている。自分も相手にレッテルを貼ることで、自分の行動が変わるんだなと。ネガティブなものを貼るよりも、そうじゃない部分も見ていきたい。あと、自分なんてと思いがちなので、それもどこかにやりたいなと思いました。
講師)そう思っている気づけたらいいですよね、また言ってんなと。だったらそれを横に置いておいて、休もうってできるんじゃないかと思います。
研修全体の感想
実施した研修について、全体の感想ももらいました。
初めはどのような内容になるのか、正直緊張もありましたが、とても楽しく、内容も充実した研修でした。
座学の研修より、自分の感情をとぎすまし、視知と感情を整理し考える研修は、貴重な体験で、とてもためになったと思います。
自分をさらけ出すことに対して抵抗がある人がほとんどの中で、これだけ積極的なコミュニケーションが取れるトレーニング研修があってよかったです。
研修案内から想像していたよりも、業務につながる内容だと思いました。
普段仕事の中ではなかなかたくさん笑ったりすることがないため、今回このタイミングで研修を受け、たくさん笑うことができ心が元気になれてよかったです。
普段経験することのない体験でしたが、創造されてた体験が実体験に生かせるかもしれないという手応えを感じました。
仕事で落ち込むことが続いていましたが、これからもがんばってみようと思えました。
感情を思いっきり出すことが普段の生活でやることがないので、恥ずかしさもありましたがスッキリしました。
仕事の中で感じる感情とつながることも多く、言語で感じたことを伝えることも、言葉に頼らず感覚的なところで感情を伝えることも、どちらも大切なことなんだなと改めて感じました。
普段、感情が揺さぶられることの多い仕事なので、こういう研修で気付きを得られるのはいいと思います。
最初はどんな研修をするのか不安であったが、やってみて、感情を素直に出すことができる場所、場面があることの大切さを実感しました。また、その感情も自分の固定概念・レッテルに左右されることも実感しました。
今回のような研修を少しずついろんな人が体験できればいいと思います。
日々さまざまな状況に出会う児童相談所の職員の皆様は、日々保護者や子ども達と直接関わる、いわば現場の最前線で働く方達です。皆さんにとって知識だけでなく、今その現場でどんな自分でいるのか、どんなことを発信できるのかという、身体や心のトレーニングを積んでいくことは、大きな助けになるのではと思います。
インプロ・演劇というジャンルで活動している私たちだからこそ持っている、身体と心の学びや感覚を、これからも広げていきます。